私の志集④

この時は、新宿駅西口の雑踏の中、11年前とまったく変わらずに真っすぐと前を見つめて立っていた「私の志集」の方から、「志集」を購入することはできませんでした。

友人と一緒に「私の志集」の方の横を通り過ぎてから数か月後、私はその時の出来事をすっかりと忘れたまま新宿に出掛けていました。

たまたま、ひとりで新宿に出ていて少しお酒も入っていました。偶然、新宿西口の「あの柱」の近くを歩いていました。

いつか見た風景を見ながら「私の志集」を思い出し、「今回、見かけたら志集を買おう!」と心の中で決意し、「あの柱」に近づいて行きました。

少し遠くからでもわかります。「私の志集」の方が前と同じ様子で立っています。

この時は私の決意が強かったのか、お酒の勢いもあったのか、柱の前に立つ方の前に辿りつき、話しかけることができました。

「志集を一冊ください!」

「私の詩集」の方は驚いたような表情で「はい!」と答えてくださいました。

どこかの遠くを真っすぐと見つめていた視線が、私のすぐ目の前に降りてきた時の不思議な印象を今でもはっきりと覚えています。

ついに「私の志集」の方に接触することができました。

令和3年9月6日