地域の食文化による差別化

中小小売店が、大手と競争する場合、地域の文化を把握することは
とても重要です。特に食品ではそれが顕著になります。
中小小売業が競争していくためには、地域に密着した小売店として、
大手とは異なる品揃えで、地域のお客様に満足される店作りが大切です。

その地域に住んでいたら、食文化についてはなかなか意識できませんが、
引越しや旅先でスーパーマーケットの売場を見るとその違いがわかります。
食品であれば「青果物の産地」「魚の産地と名前」「調味料」などがポイント
になるので、注意して見てみると面白いと思います。

多くの地域では、野菜はその特性上、その地域近郊の産地の商品が多く、
また、その地域ならではの商品も多くあります。また、果物は特に産地が
重要になります。野菜とは異なり、味の個体差が明確にわかる果物は、
産地のブランド化が進みやすく、その地域で好まれるブランドが多くあります。
例えば、桃の名産地である岡山県で山梨県の桃を販売しても思ったような
売上が上がるはずありません。

魚についても同様です。また、魚はその地域で呼ばれる名前が異なることにも
注意が必要です。例えば、同じ中国地方であっても、日本海側と瀬戸内側では、
同じ種類の烏賊であっても名前は異なるものがあります。

また、調味料については、特に「みそ」「しょうゆ」に注意が必要です。
これらの商品は、ケチャップやマヨネーズなどのような絶対的な全国ブランドが
存在しない上に、利用頻度が高く、料理の味を決定付ける重要アイテムです。
これらの品揃えが地域に合っていないと、消費者は別の店舗に行ってしまいます。

こうした食文化の違いは、同一県内であっても異なるので注意が必要です。
例えば、広島県内であっても、広島市周辺と福山市周辺では異なります。
もともと、昔は「安芸」「備後」と違う国であり、歴史背景や文化が異なる
地域であることが要因であると考えられます。
江戸時代の「備後」は幕府に近い藩で、江戸からの文化も直接
入ってきたのに対し、「安芸」は幕府とは縁遠い藩でした。
また、「備後」の中心地である福山市は、北前船の潮待ち・風待ちの湊
として栄えた「鞆の浦」を抱えていたので、豊富な食材が入ってきた
ものと考えられます。

これらのように、今となってはわからない様々な要因がその地域の食文化を
形成しています。そうした時は、歴史を紐解くと色々なことがわかります。

地域に根ざした小売店であれば、地域の食文化に精通しているハズですし、
地域の商品を取り扱っている仕入先との取引もあるハズです。
これは、県外から進出してきた、大手はあまり得意としていない所です。

大手流通業と競争するために、価格の安さや品揃えの豊富さで
勝負しても勝ち目はありません。
そうした中で競争していくためには、特定の狭い範囲の品揃えで
差別化していくしかありません。

所謂、「こだわり商品」で差別化を図るわけですが、
その時の方法の一つとして、地域の食文化にこだわる
ということも考えてみては如何でしょうか?

 

平成21年9月4日