覇道と王道!?

前回、「鼎の軽重を問う」について書きましたが、その時に春秋五覇の一人である楚の荘王が出てきました。

春秋五覇とは、中国の春秋時代、周王朝に代わって天下を取り仕切った5人の覇者を指します。(5人が誰なのかは文献によって違いがあります)

メインとして挙げられるのは、晋の文公、斉の桓公、秦の穆公、宋の襄公、楚の荘王の5人となります。どの覇者も有名で、多くの故事が残されています。中でも、晋の文公、斉の桓公は実績的に見ても他の覇者を圧倒する代表格になります。興味があれば、この2人について調べてみてください。

さて、覇者とは何でしょうか?覇者が力によって行う政道を覇道と呼びます。それに対する政道が王道になります。

覇道と王道は中国の政治思想になります。「王者」とは殷王朝、周王朝時代から続く封建制の諸侯(日本でいえば大名)に君臨する権威者(日本でいえば天皇)を指します。それに対し、「覇者」とは殷周時代の後の時代になる春秋時代に、周王に代わって諸侯を統制した実力者(日本でいえば征夷大将軍)のことを指します。そのため「覇者」は力の際立っている諸侯になります。

王道は王者が行う徳を政治原理とした道徳的な政治であり、覇道とは春秋時代の力を持った覇者が行なった武力による権力政治になります。儒教の始祖として有名な孔子は徳を政治原理とする仁政を理想としていましたので、「王道」を理想的な政治とし、「覇道」をその逆としていたようです。

会社経営に置き換えれば、「徳」による経営を行うか、「力」による経営を行うか、のようになると思いますが、どちらの方が良いのでしょうか?

王道」の政治を行う前提として、社会の経済的安定が挙げられています。殷王朝、周王朝の安定期は経済的に安定していたので、「王道」による政治が機能しましたが、周王朝末期には王朝の力が弱まり、諸侯による争いが繰り広げられることになりました。その結果として登場したのが「覇道」になります。

会社の経営や社会環境が安定していれば、王道の経営、つまりは徳による経営が良いと思われますが、会社の経営や社会環境が厳しければ、覇道の経営、力による経営が求められるかも知れません。

果たして、今の社会環境はどちらの経営が良いのでしょうか?

中国の歴史を学ぶと、経営についても参考になることが色々とあると思いますので、興味がある方は本を紐解いては如何でしょうか?

令和3年5月26日