先日、ある工場の生産性を向上させるための相談を受けました。
企業規模は大きくなく、人材も不足していることから管理のレベルは高いものとは言えない状況でした。
独力で、原価管理や管理会計の導入、マニュアルの作成など、生産管理に関する取り組みをテーマに取り組んでおり、時には専門家の力を借りながら取り組んできたものの、苦労して作った仕組みは、なかなか現場に定着しない状況が続いたとのことでした。
慣れない管理手法は結果を把握することだけに使われ、現場としては「上司から評価されるモノサシ」としか理解されず、また、マニュアルについても、現場では「使えない資料」とされ、単なる本棚を彩るコレクションになってしまったのです。
実は、管理手法やマニュアルを導入する以上に、現場に仕組みを定着させることは難しいのです。
組織のレベルに合わない仕組みは、どんなに立派なものであっても活用されることはありません。その会社や組織のレベルに合わせることが大切なのです。
以前、ある小売業の業務標準化に取り組んだ時には、まったく作業スケジュールが作成されていなかったことから、まず、実際のスケジュールの把握から取り組みました。
次に、現場のスタッフの方を交えて何が問題なのかを考え、一緒に改善するポイントを導き出していきました。
最後には、現場のスタッフの方に「どんなツールがあれば改善できると思いますか?」という問いを投げかけ、現場スタッフが望む形でマニュアルなどを整備していきました。
現場が必要とするマニュアルは、上からの押し付けでは無い「活きたマニュアル」になります。
また、この取り組みの過程で、従業員の方に問題意識が芽生え、組織のレベルも徐々に上がってきました。
「仕組みづくり」や「マニュアルづくり」を「人づくり」に活かし、組織のレベルを向上させる。
それこそが本質的な目的であり、取り組みを成功させるポイントだと言えます。
令和3年6月6日