小売業と魚釣りの関係性

小売店で売場づくりをしていると、「良く売れる売場」「良く売れる売り方」に出会うことがあります。そういった状態に出会うとうれしいもので、小売業の「やりがい」であり「醍醐味」とも言えるでしょう。

言い換えれば「必勝パターン」を見つけ出したことになるわけですが、不思議なことにしばらくすると効果が出なくなったり、他の場所では通用しなかったりします。その都度、試行錯誤して「新しいパターン」を考え出すのも小売業の醍醐味と言えるでしょうか。

魚釣りをしていると、とてもたくさんの魚が釣れることがあります。ある時、友人3人でタチウオのルアー釣りをしましたが、ひと晩で47匹を釣り上げることができました。ところが、同じ場所、同じ潮、同じ時間に釣りをしても、その通りに釣ることはできませんでした。もちろん、他の魚釣りをしている時も同じようなもので、同じ瞬間はなかなか訪れません。

とはいうものの、ある程度の傾向はあり、その時期の「餌」「タナの深さ」「時間」などを記録していくと、釣果は確実に上がりますし、なかなか釣れない場合でも、過去の傾向を活かして、ルアーを変えたり、タナを変えたり、場所を変えることでなんとか釣りにはなるものです。当然ながら釣りには運もありますが、コンスタントに釣果を上げるためには工夫も必要ですし、そのためには研究も必要だったりするわけです。

小売業、ましてやお客様を魚釣りや魚に例えるのは失礼ではありますが、当然ながら人間であるお客様は魚とは比較にならないほど複雑な思考力があり、小売業は魚釣りと比較にならないほど複雑な業務があります。

一方で、魚の気持ちは人間にはわかることができないのに対し、お客様は自分と同じ人間なので気持ちを理解することができますし、こちらからのメッセージを伝えることもできます。工夫することで魚釣り以上に効果は出るハズです。

小売業と魚釣りという極端な例を書きましたが、実は同じ人間であっても「売り手」と「買い手」は全く思考がことなります。それは「売る」という行為と「買う」という行為が相対するものだからです。相当努力して「お客様の気持ち」にならないと、お客様に寄り添った商売は難しいとも言えます。

魚釣りとの比較が適切とは思いませんが、少なくとも「売り手」と「買い手」の思考が異なることを常に認識し、研究と工夫を繰り返し、経験を積み、多くの必勝パターンを生み出し、手札や引き出しを増やしていくことが、小売業で成果を出すポイントだと思います。私自身も意識して取り組みたいと思います。

令和3年4月19日