夏草の線路

前回、遊佐未森さんのニューアルバム「潮騒」について書きましたが、その流れで遊佐未森さんについて書いてみたいと思います。

出会いは高校生の頃になります。そのころはCDラジカセが普及してきて、帰宅で簡単に音楽が聴けるようになりました。まだまだビデオカセットも全盛期で、CDレンタルやビデオレンタルが人気でした。

音楽番組も人気で、毎日のように放送される中、同級生などは人気のミュージシャンを見つけてはCDを買ったり借りたりして、友達に紹介したりといったことが日常でした。

私はあまりテレビを見ない学生でしたが、その代わり、ラジオを聴くのが好きで、特定の番組にはハガキを投稿したりしていました。

そうしたある日、ラジオから流れてきた音楽に、高校生の私は心を奪われました。

遊佐未森さんの「夏草の線路」です。今でも大好きな一曲です。

幼いころ、線路の近くで育ったからでしょうか。夏の暑い日の線路が出てくるこの曲は妙に既視感があり、目を閉じて聞くと、幼いころに遊んだ場所の近くにあった踏切や友達の顔が浮かんできました。

恐らく、当時の友達は私のことは忘れているでしょうし、一生、出会うことは無いかもしれません。それでも、線路や踏切、そこを走る電車を見た時に、当時のことを思い出してくれるかもしれません。

歌詞にも出てきますが、どこまでも続く線路のように、遠い昔の記憶や友達との思い出は、夏の雑草に埋もれてしまっていたとしても無くならず、これからも続いていくような気がします。

私はこの曲を聴いて、そんな思いを持ちましたが、当時の友達も線路を見たりして、同じ気持ちになっているかも知れません。

線路は町と町とを繋ぐだけではなく、人と人とも繋いでいる。

そう思うと日常生活で線路や踏切を見かけたり、仕事や旅行で電車に乗ることが、何か特別な出来事なような気がして少しだけ楽しくなるような気がします。

令和3年7月5日